乳幼児期に受けるべき定期接種一覧とそのスケジュールの解説

乳幼児期に受けるべき定期接種一覧とそのスケジュールの解説

1. 乳幼児期の定期接種とは

日本における乳幼児期の定期予防接種は、子どもたちが感染症から守られることを目的として、国が法律で定めたワクチン接種制度です。これは「予防接種法」に基づき、市区町村が無料で実施しています。生後すぐから6歳までに受けることが推奨されており、対象となるワクチンやスケジュールも決まっています。

定期接種の目的

乳幼児期の免疫力はまだ未熟なため、感染症にかかりやすい時期です。定期接種は重症化しやすい病気(麻しん、風しん、百日せきなど)から子どもを守り、集団全体への感染拡大を防ぐためにとても重要です。また、社会全体で「集団免疫」を高める役割も担っています。

法律に基づく接種義務

日本では、「予防接種法」により保護者には子どもに定期予防接種を受けさせる努力義務があります。市区町村から個別に通知が届く場合が多く、指定された期間内に指定された医療機関で無料で接種できます。ただし、病気や特別な事情がある場合には医師の判断で延期できることもあります。

主な乳幼児向け定期接種一覧

ワクチン名 対象年齢 主な予防感染症
B型肝炎(HBV) 生後0~1歳 B型肝炎ウイルス感染症
ヒブ(Hib) 生後2か月~5歳未満 細菌性髄膜炎など
小児用肺炎球菌 生後2か月~5歳未満 肺炎・中耳炎など
DPT-IPV(四種混合) 生後3か月~7歳半未満 ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ
BCG 生後5か月未満 結核
MR(麻しん風しん混合) 1歳および小学校入学前1年間 麻しん・風しん
水痘(水ぼうそう) 1~3歳未満 水痘ウイルス感染症(水ぼうそう)
日本脳炎 3歳~7歳半未満(第1期)、9~13歳未満(第2期) 日本脳炎ウイルス感染症
注意点について

定期接種は無料ですが、指定期間を過ぎると自己負担になる場合があります。各自治体から届く案内を必ず確認して、スケジュール通りに受けましょう。

2. 日本の定期接種ワクチン一覧

日本では、乳幼児期に受けるべき定期接種ワクチンが決められており、これらは子どもをさまざまな感染症から守るためにとても重要です。ここでは、主に対象となるワクチンの一覧とその特徴についてご紹介します。

主な定期接種ワクチン一覧

ワクチン名 対象となる病気 接種開始時期(目安) 回数
ヒブワクチン インフルエンザ菌b型による感染症 生後2か月~ 4回
肺炎球菌ワクチン(小児用) 肺炎球菌による感染症 生後2か月~ 4回
B型肝炎ワクチン B型肝炎ウイルス感染症 生後2か月~ 3回
ロタウイルスワクチン ロタウイルス胃腸炎 生後2か月~ 2~3回(種類による)
四種混合(DPT-IPV)ワクチン ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ 生後3か月~ 4回+追加1回
BCGワクチン 結核(けっかく) 生後5か月までに1回 1回
麻しん・風しん混合(MR)ワクチン 麻しん(はしか)、風しん(三日はしか) 1歳~、小学校入学前1年間に追加1回 2回

各ワクチンのポイント解説

ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン(小児用)

ヒブや肺炎球菌は乳幼児が重い細菌性髄膜炎などになる原因です。早めの接種が大切です。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルスは母子感染や血液・体液を介してうつります。定期接種で子どもを守りましょう。

ロタウイルスワクチン

激しい下痢や嘔吐を引き起こすロタウイルス胃腸炎を予防します。経口摂取タイプのワクチンです。

四種混合(DPT-IPV)ワクチン

DPT-IPVは、ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオの4つの病気を一度に予防できる混合ワクチンです。

BCGワクチン(結核予防)

日本では結核対策として、生後5か月までにBCG接種が勧められています。腕に小さな痕が残りますが心配いりません。

麻しん・風しん混合(MR)ワクチン

重い合併症を伴うこともある麻しんと、妊娠中の感染で問題となる風しんを同時に予防できる大切なワクチンです。

上記以外にも、日本では地域や年齢によって他の定期接種が行われている場合があります。詳しいスケジュールは自治体や母子健康手帳で確認しましょう。

推奨される接種スケジュール

3. 推奨される接種スケジュール

日本においては、乳幼児期に受けるべき定期接種ワクチンには、それぞれ標準的な接種時期や間隔が定められています。日本小児科学会などの専門機関が推奨するスケジュールに従うことで、お子さまをさまざまな感染症から守ることができます。

月齢・年齢ごとの標準的な接種時期

ワクチン名 初回接種開始月齢・年齢 接種回数 接種間隔・スケジュール例
B型肝炎(HBV) 生後2か月~ 3回 1回目:生後2か月
2回目:1回目から4週間後
3回目:1回目から20~24週後
ヒブ(Hib) 生後2か月~ 4回 1~3回目:生後2、3、4か月
追加:1歳前後
小児用肺炎球菌(PCV13) 生後2か月~ 4回 1~3回目:生後2、3、4か月
追加:1歳前後
DPT-IPV(四種混合/ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ) 生後3か月~ 4回+追加1回 1~3回目:生後3、4、5か月
追加:1歳半頃
二期:小学6年生相当時
B型インフルエンザ桿菌(BCG) 生後5か月~8か月未満 1回 原則として1歳未満に接種推奨
MR(麻しん・風しん混合) 1歳~、小学校入学前年度1年間(年長) 2回 1回目:1歳
2回目:小学校入学前年度の春~夏頃
水痘(水ぼうそう) 1歳~3歳未満 2回 1回目:1歳
2回目:初回から6か月以上あけて接種推奨(通常は1歳半頃)
日本脳炎(JE) 生後6か月~7歳半未満(標準は3歳) 4回(初期2回+追加+2期) 初期2回:標準は3歳で接種、1~4週間あけて2回
追加:4歳で接種
二期:9歳で接種推奨(13歳未満まで可)

日本小児科学会の推奨スケジュール例について

日本小児科学会では、「できるだけ早く、多くのワクチンを同時に受ける」ことを推奨しています。たとえば、生後2か月になったらB型肝炎、ヒブ、小児用肺炎球菌などを同時に受けることが一般的です。また、予防接種のタイミングを逃さないよう、母子健康手帳や自治体からの案内を活用しましょう。

主なポイント:

  • 生後2か月~:B型肝炎、ヒブ、小児用肺炎球菌など複数ワクチンの同時接種が可能です。
  • DPT-IPV:DPT-IPVも含めて、生後3か月から毎月計画的に進めるのがおすすめです。
  • M R、水痘:M Rや水痘は誕生日以降なるべく早く受けましょう。
ご注意ください:

体調不良や予定が合わずスケジュール通りに進まない場合もありますが、医師や保健センターと相談してなるべく早めに完了するようにしましょう。

適切な時期に予防接種を受けることで、大切なお子さまを感染症からしっかり守ることができます。

4. 予防接種を受ける際の注意点

体調管理のポイント

予防接種を安全に受けるためには、当日の体調がとても大切です。特に乳幼児は体調の変化が分かりにくい場合もあるので、普段と違う様子がないかしっかり観察しましょう。
下記のチェックポイントを参考にしてください。

チェックポイント 確認内容
発熱 37.5度以上の発熱がないか確認しましょう。
風邪症状 咳や鼻水、下痢などの症状がないか見てください。
機嫌 いつもより元気がない、ぐずっている場合は医師に相談しましょう。

母子手帳の活用方法

日本では、予防接種の記録やスケジュール管理に母子手帳(ぼしてちょう)が欠かせません。母子手帳には接種日やワクチン名、副反応についても記録できますので、必ず持参し、その場で記入してもらいましょう。また、次回の接種予定日も母子手帳で確認できます。

予診票の記入について

予防接種を受ける前には「予診票(よしんひょう)」の記入が必要です。これは、お子さんの健康状態やアレルギー歴などを医師に伝える大切な書類です。不明点があれば、遠慮せずスタッフや医師に質問してください。

接種後の注意点

ワクチン接種後は、30分ほど院内で様子を見ることが勧められています。万が一急な体調変化(アレルギー反応等)が現れた場合にすぐ対応できるようにするためです。また、当日は激しい運動や長時間のお風呂は控えましょう。

接種後の過ごし方・チェックリスト

項目 内容
注射部位の様子 赤みや腫れ、痛みが強い場合は医師に相談しましょう。
全身状態の観察 高熱やぐったりするなど、普段と違う場合は早めに受診しましょう。
水分補給・安静 十分な水分を取り、無理せずゆっくり過ごしましょう。

これらのポイントを押さえておくことで、乳幼児が安心して予防接種を受けることができます。保護者の方もお子さんと一緒に落ち着いて準備しましょう。

5. Q&A:よくある質問と悩みへの対応

Q1. 定期接種を受けるタイミングを過ぎてしまった場合、どうすればいいですか?

定期接種は推奨された時期に受けるのが理想ですが、やむを得ず遅れてしまった場合でも、なるべく早く医療機関に相談しましょう。多くの場合、スケジュールを調整して接種できるようになっています。
以下は主なワクチンごとの遅れた際の対応例です。

ワクチン名 遅れた場合の対応
ヒブ・小児用肺炎球菌 年齢に合わせて必要回数が異なるため、小児科で確認しながら進めます。
B型肝炎 最初からやり直す必要はなく、足りない分だけ追加します。
四種混合(DPT-IPV) 次回以降も間隔を空けて接種できます。
MR(麻しん・風しん) 指定年齢を過ぎても無料期間内であれば接種可能です。

心配な場合は母子手帳を持参し、かかりつけ医に相談しましょう。

Q2. 副反応が心配です。どんな症状が出ますか?

定期接種後によく見られる副反応には下記のようなものがあります。

主なワクチン よくある副反応
全般 発熱・注射部位の腫れや赤み・軽い不機嫌など
MRワクチン 7〜10日後に軽い発疹や発熱が出ることがあります。
B型肝炎・ロタウイルス等 ごく稀にアレルギー症状や下痢等が見られることがあります。

通常は数日で治まりますが、高熱やひどい腫れ、呼吸困難など異常な症状が出た場合はすぐに医療機関を受診してください。

Q3. アレルギー体質の場合、予防接種は大丈夫ですか?

卵アレルギーや食物アレルギーがあっても、多くのワクチンは問題なく接種できます。ただし、過去にワクチンで強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が出た場合は注意が必要です。必ず事前に医師へ相談してください。また、予防接種当日は体調を整えて受けるよう心掛けましょう。

Q4. 兄弟姉妹で同じ日に複数のワクチンを受けても大丈夫?

同日に複数のワクチンを接種する「同時接種」は、日本でも安全性が確認されています。時間や通院回数の負担軽減にも役立ちます。不安な場合は医師とよく相談して決めましょう。

Q5. 予防接種後の入浴や外出は控えた方が良いですか?

基本的には普段通りで問題ありません。注射部位を強くこすらないよう注意し、高熱や体調不良がない限り入浴やお散歩もOKです。