予防接種の基本知識と日本における定期・任意ワクチンの違い

予防接種の基本知識と日本における定期・任意ワクチンの違い

1. 予防接種とは何か

日本における予防接種の基本的な考え方

予防接種(ワクチン接種)は、感染症を未然に防ぐための重要な医療行為です。ワクチンによって体内に免疫をつくり、重い病気にかからないようにしたり、流行を抑えたりすることが目的です。日本では、子どもから大人まで多くの人が対象となっており、健康な生活を送るために欠かせないものとされています。

予防接種の目的

  • 個人の健康を守る: 感染症による重症化や合併症を予防します。
  • 社会全体への感染拡大を防ぐ: 集団免疫効果で周囲の人も守ります。

ワクチンの役割について

ワクチンは、弱めたウイルスや細菌、あるいはその一部を体内に入れることで、免疫力(病原体に対抗する力)を高めます。これにより、実際に感染した場合でも症状が軽く済む場合が多く、命を守る大きな役割があります。

主なワクチンの種類

ワクチン名 主な対象疾患
BCG 結核
DPT-IPV ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ
MRワクチン 麻しん・風しん
日本での特徴

日本では、「定期接種」と「任意接種」に分けて実施されており、それぞれ公費負担や対象年齢などが異なります。次回は、この違いについて詳しくご紹介します。

2. 定期接種と任意接種の違い

日本における予防接種制度の基本

日本では、子どもや大人が感染症から身を守るためにさまざまなワクチンが用意されています。その中でも、ワクチンは大きく「定期接種」と「任意接種」の2つに分かれています。それぞれの特徴や対象についてわかりやすく解説します。

定期接種(義務的)とは?

定期接種は、国や自治体が勧めている予防接種で、多くの場合、無料または一部負担で受けることができます。対象年齢や回数、時期などが法律で決められており、原則として保護者には子どもに受けさせる義務があります。主に小児が対象となりますが、一部成人向けのものもあります。

定期接種の主な例

ワクチン名 主な対象年齢 感染症例
BCG 生後5か月〜1歳未満 結核
DPT-IPV(四種混合) 生後3か月〜7歳6か月未満 ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ
麻しん・風しん混合(MR) 1歳・小学校入学前 はしか・風疹
日本脳炎 3歳〜12歳未満 日本脳炎
ヒブ、小児用肺炎球菌 生後2か月〜5歳未満 細菌性髄膜炎 など

任意接種(希望制)とは?

任意接種は、保護者や本人の希望に応じて受ける予防接種です。法律による義務はなく、費用は全額自己負担となる場合が多いですが、一部自治体で助成金が出ることもあります。必要性やタイミングは個人差があるため、小児科医などと相談して決めます。

任意接種の主な例

ワクチン名 主な対象年齢・時期 感染症例
B型肝炎(成人) 成人全般(医療従事者など特に推奨) B型肝炎ウイルス感染症
おたふくかぜ(ムンプス) 1歳以上(園児・小学生推奨) 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
インフルエンザワクチン 毎年秋〜冬、大人も子どもも可 インフルエンザウイルス感染症
ロタウイルスワクチン(一部自治体では定期化) 生後2か月〜6か月までに複数回接種推奨 ロタウイルス胃腸炎
A型肝炎ワクチン A型肝炎流行地域への渡航前などに推奨 A型肝炎ウイルス感染症

定期接種と任意接種の比較表

定期接種(義務的) 任意接種(希望制)
費用負担 無料または一部負担(自治体による) 自己負担(一部助成ありの場合も)
対象年齢・条件等 国や自治体で決定、原則義務あり 本人・保護者の希望による自由選択
代表的なワクチン例 DPT-IPV、MR、日本脳炎 など B型肝炎、おたふくかぜ、インフルエンザ など
目的 集団全体の感染予防・流行抑制 個人の健康保持・特別なリスク対策
法的義務 あり なし

まとめ:それぞれの違いを理解して適切な予防接種を!

定期接種と任意接種には、それぞれ制度的な違いや特徴があります。家庭やお子さんの状況に合わせて、必要なワクチンを選びましょう。不安や疑問がある場合は、小児科医や保健センターなど専門家へ気軽に相談してください。

日本で実施されている主な定期ワクチン

3. 日本で実施されている主な定期ワクチン

日本の予防接種法に基づき、子どもを中心にさまざまな定期ワクチンが実施されています。これらのワクチンは、国や自治体によって無料または一部負担で受けることができ、感染症の予防に重要な役割を果たしています。以下の表は、日本で主に行われている定期予防接種と、その適用年齢をまとめたものです。

ワクチン名 対象となる主な病気 接種開始年齢 備考
B型肝炎(HBV) B型肝炎 生後2か月から 3回接種
ヒブ(Hib) インフルエンザ菌b型感染症 生後2か月から 4回接種
小児用肺炎球菌(PCV13) 肺炎球菌感染症 生後2か月から 4回接種
四種混合(DPT-IPV) ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ 生後3か月から 4回+追加1回
BCG(結核) 結核 生後5か月までに1回
MR(麻しん・風しん混合) 麻しん・風しん(はしか・ふうしん) 1歳および小学校入学前1年間の2回
水痘(水ぼうそう) 水痘(みずぼうそう) 1歳から2回接種
日本脳炎 日本脳炎ウイルス感染症 3歳から4回接種(途中追加あり)
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン 子宮頸がんなどの予防 小学6年〜高校1年相当の女子(男子も一部自治体で実施)

定期ワクチンのポイントについて知ろう!

定期予防接種は、決められた年齢や期間内に受けることがとても大切です。
各ワクチンには最適な接種時期がありますので、母子健康手帳などでスケジュールを確認しながら、忘れずに受けるようにしましょう。また、市区町村からのお知らせもチェックすることがおすすめです。

まとめ:ワクチンごとに異なる接種時期をしっかり把握!

日本で定められている定期ワクチンは、それぞれ対象年齢や回数が違います。家族みんなで予防接種について話し合い、安心して子育てできる環境を作りましょう。

4. 任意接種で受けられるワクチン

日本では、定期接種のほかに「任意接種」と呼ばれる予防接種があります。これは国や自治体が推奨しているものの、法律によって義務付けられていないワクチンです。任意接種は主に自費で受ける必要がありますが、お子さまやご家庭の状況に合わせて選択することが大切です。

任意接種で推奨されている主なワクチン

ワクチン名 対象となる疾患 主な接種対象
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) 1歳以上の子ども、大人も可
B型肝炎ワクチン(成人・一部小児) B型肝炎ウイルス感染症 感染リスクのある方、希望者
インフルエンザワクチン 季節性インフルエンザ 生後6か月以上、高齢者、妊婦など幅広い層
ロタウイルスワクチン(※2020年10月以降は定期化) ロタウイルス胃腸炎 乳児(経過措置や希望者向け)
A型肝炎ワクチン A型肝炎ウイルス感染症 海外渡航者など特定のリスクがある方
髄膜炎菌ワクチン 髄膜炎菌による感染症 海外留学・渡航予定者等
帯状疱疹ワクチン(50歳以上推奨) 帯状疱疹(ヘルペス・ゾスター) 50歳以上の大人、高齢者
HPV(ヒトパピローマウイルス)9価ワクチン(シルガード9)※定期外分追加分として任意可 子宮頸がん等を引き起こすHPV感染症 希望する女性・男性(年齢制限あり)
水痘(水ぼうそう)ワクチン(成人用等)※定期外分追加分として任意可 水痘(水ぼうそう)感染症予防または重症化予防目的で成人へ追加接種の場合など 成人、免疫低下状態の方など希望者

特定の環境やニーズに応じた接種例について

海外渡航や留学の場合のワクチン接種例

海外に行く際には、日本ではあまり見られない感染症への対策が必要になる場合があります。例えば、A型肝炎や髄膜炎菌、黄熱病などのワクチンは、渡航先や現地の衛生状況によって求められることがあります。渡航前には医療機関やトラベルクリニックで相談しましょう。

基礎疾患を持つ方や高齢者への推奨例

糖尿病や心臓病、呼吸器疾患など持病がある方、高齢者は一般よりも感染症にかかった際の重症化リスクが高いため、インフルエンザや肺炎球菌、帯状疱疹など複数の任意ワクチン接種が勧められています。

任意接種を検討する際のポイント
  • 家族構成:兄弟姉妹が保育園や幼稚園に通っている場合は、おたふくかぜやインフルエンザなど集団生活で流行しやすい感染症への備えがおすすめです。
  • 健康状態:持病がある場合は主治医と相談して優先順位を決めましょう。
  • ライフスタイル:海外旅行、ボランティア活動、医療従事など特殊な環境に入る前は必要なワクチンを確認しましょう。

任意接種はご家庭ごとの事情に合わせて柔軟に選べます。不明点があれば小児科医や保健所に相談し、安心して選択できるようにしましょう。

5. 接種時の注意点と情報の入手方法

予防接種を受ける際の注意事項

予防接種はお子さまやご自身の健康を守るためにとても大切です。日本でワクチンを受ける際には、次の点に注意しましょう。

注意点 具体的な内容
体調の確認 発熱やひどい咳など体調が悪い場合は、接種前に医師へ相談してください。
母子健康手帳の持参 予防接種の記録やスケジュール管理のために必ず持参しましょう。
アレルギーの有無 卵アレルギーなど、特定の成分に反応する場合は事前に伝えましょう。
接種後の観察 接種後30分ほどは医療機関で様子を見ることが推奨されています。
スケジュール管理 定期・任意ワクチンともに、決められた期間内で接種できるよう計画しましょう。

日本の地域ごとの情報取得方法

予防接種について正しい情報を得るには、以下のような方法があります。住んでいる自治体によって案内方法や内容が異なることがあるので、自分の地域の情報を確認しましょう。

情報源・窓口 内容・特徴 利用方法
市区町村役所・保健センター 定期・任意接種の日程や会場、対象年齢など細かい案内がもらえます。 直接窓口で相談したり、公式ウェブサイトで調べることができます。
母子健康手帳配布時の資料 ワクチンごとの説明やスケジュール表がついています。 冊子やリーフレットを参考にし、不明点は保健センターへ問い合わせましょう。
小児科クリニック・かかりつけ医 専門的なアドバイスや個別相談が可能です。 予約時や診察時に質問しましょう。
厚生労働省・自治体公式サイト 最新のお知らせやQ&Aなど信頼できる情報源です。 インターネットで「(地域名) 予防接種」と検索します。
日本ワクチン学会等専門団体サイト(例) ワクチンについて詳しく知りたい場合に便利です。 公式サイトを閲覧し、不明点は問い合わせフォームから質問できます。

困った時・相談したい時の連絡先例(東京都の場合)

相談窓口名 電話番号/受付時間等
東京都感染症対策課(予防接種担当) 03-5320-4504/平日9:00〜17:00
各区市町村保健センター 各自治体ホームページ参照
まとめポイント:

– 接種前には体調確認と持ち物準備を忘れずに
– 地域によって案内内容やスケジュールが異なるため、自治体窓口や公式サイトを活用することが大切です
– 不安な点はかかりつけ医や保健センターへ気軽に相談しましょう