災害時・非常時に備えるべき市販薬と応急処置の知識

災害時・非常時に備えるべき市販薬と応急処置の知識

1. 災害時に備えて常備したい市販薬の選び方

日本は地震や台風などの自然災害が多く、災害時には医療機関へのアクセスが難しくなることがあります。こうした非常時に備えて、自宅や避難所で役立つ市販薬を準備しておくことはとても大切です。ここでは、日本国内で入手しやすい市販薬の中から、災害時に必要なものの特徴や選び方について解説します。また、健康保険制度に基づく注意点もふまえてご紹介します。

災害時に備える市販薬の基本ポイント

  • 普段から使い慣れているものを優先する
  • 家族構成(高齢者、子ども、持病の有無)を考慮する
  • 薬の使用期限を定期的に確認する
  • 持ち運びやすいサイズ・パッケージを選ぶ

家庭や避難所で実用的な市販薬の例と選び方

用途 おすすめ市販薬例(日本国内) 選び方・ポイント
解熱鎮痛剤 ロキソニンS、イブA錠など 発熱や頭痛、痛みに対応。アレルギー歴があれば要注意。
胃腸薬 正露丸、ガスター10、太田胃散など 食事環境の変化による腹痛・下痢・胃もたれ対策。
風邪薬 パブロンゴールドA、ルルアタックEXなど 発熱・咳・鼻水など多様な症状に対応。眠気成分の有無も確認。
抗アレルギー薬 アレグラFX、クラリチンEXなど 花粉症やじんましん対策。眠気が出にくいタイプが便利。
外用消毒薬・絆創膏類 オキシドール、イソジン液、バンドエイドなど けがや傷口の応急処置。水に強い絆創膏もおすすめ。
目薬・点眼薬 サンテFX、ロートアルガードなど 乾燥や異物感、アレルギー症状対策。
便秘薬・整腸剤 新ビオフェルミンS、コーラックなど 生活リズムの乱れによる便通トラブル予防。
持病薬の予備(※) -(主治医処方分) 持病がある場合は主治医と相談し、多めにストック。

健康保険制度との関連注意点

  • 災害時でも健康保険証を携帯しましょう。避難先で医療機関を受診する際に必要です。
  • 市販薬(OTC医薬品)は健康保険適用外ですが、「セルフメディケーション税制」を活用すると所得控除対象になる場合があります。
  • 慢性疾患等で医師から処方される薬は、市販薬で代替できないことも多いため事前準備が重要です。
まとめ:家庭ごとの備えが大切です

ご家族それぞれの体質や健康状態に合わせて、市販薬を選びましょう。日頃から使用期限を確認し、不足や古くなったものは補充しておくことが安心につながります。

2. 救急セットに加えるべき応急処置用品

災害時や非常時には、市販薬だけでなく、迅速な応急処置ができる救急用品を備えておくことが重要です。ここでは、包帯・消毒薬・ガーゼ・絆創膏のような基本アイテム以外に、日本で定番となっている役立つ救急用品と、その現場での有用性について具体例を挙げてご紹介します。

日本で定番の応急処置用品リスト

用品名 用途・特徴 現場での有用性 日本での定番例
三角巾(さんかくきん) 腕を吊る、止血、包帯代用など多用途 骨折や捻挫時に即対応可能 学校や自治体配布の防災セットに必ず入っている
滅菌綿棒(めっきんめんぼう) 傷口の清拭や軟膏塗布に使用 感染症対策に効果的 日本赤十字社推奨アイテム
アルコール消毒綿/ウェットティッシュ 手指・皮膚の簡易消毒、器具の清拭にも利用可 水が使えない時でも衛生管理ができる コンビニやドラッグストアで容易に入手可能
冷却シート(冷感パッド) 発熱時の一時的な冷却、打撲・ねんざ時にも活躍 高温多湿な日本では必須アイテム 家庭用防災袋にもよく含まれる
弾性包帯(エラスティックバンデージ) 関節部位の固定や圧迫止血に最適 スポーツ障害や転倒時に迅速対応可能 運動部活動・地域防災訓練でも常備されている
非接触式体温計 素早く正確な体温測定が可能(感染症流行時も安心) 家族全員の健康状態把握に有効 新型コロナウイルス流行以降、標準装備化が進む
ピンセット&ハサミ(医療用) 異物除去や包帯・ガーゼカットに必要不可欠 安全かつ衛生的な応急処置が可能になる 市販の救急箱にも付属していることが多い
ラテックスフリー手袋(使い捨て) 傷口への直接接触を避けるための衛生対策品 感染症予防・自分自身も守れる必須アイテム 病院・介護施設だけでなく家庭でも普及中
マスク(不織布タイプ) 飛沫感染防止・粉塵対策など多目的に利用可 避難所生活や屋外活動時にも安心感アップ 防災グッズとして全国民的に認知度高いアイテム

実際の場面で役立つポイントと豆知識

●三角巾は「万能布」!

三角巾は腕を吊るすだけでなく、頭部や膝の止血固定にも使えるため、一枚あると様々なケガへの対応力が高まります。

●アルコール消毒綿とウェットティッシュ

水道が止まった場合でも、これらを使えば最低限の清潔を保てます。特にアウトドア経験者にも人気です。

●ラテックスフリー手袋

ゴムアレルギー対策としても近年需要が高まっています。家族構成やアレルギー歴も考慮して選ぶとより安心です。

【ワンポイント】

日本では自治体や企業による「防災訓練」が頻繁に行われており、その際に実際にこうした救急用品を使ったシミュレーションも行われています。日頃から使い方を確認し、家族とも共有しておくことが大切です。

このような応急処置用品を事前に準備し、取り出しやすい場所へまとめておくことで、万一の災害発生時にも落ち着いて対応することができます。

日本の地震・台風等を想定した応急処置の基本知識

3. 日本の地震・台風等を想定した応急処置の基本知識

日本は地震や台風など自然災害が多い国です。災害時にはけがややけど、ねんざなどの外傷が発生しやすく、すぐに医療機関へ行けない場合もあります。ここでは厚生労働省や日本赤十字社のガイドラインを参考に、日本国内でよくある災害時の外傷やけがについて、基本的な応急処置方法を解説します。

外傷・出血への応急処置

転倒や落下物による切り傷・擦り傷は非常に多く発生します。まずは感染予防と止血が大切です。

状況 応急処置方法
小さな切り傷・擦り傷 流水で汚れを洗い流し、清潔なガーゼや絆創膏で保護する。
出血している場合 清潔な布やガーゼで強く圧迫して止血。出血が止まらない場合は患部を心臓より高く上げる。
異物が刺さっている場合 無理に抜かず、そのまま固定して早めに医療機関へ。

備えておきたい市販薬・救急用品

  • 滅菌ガーゼ、包帯、絆創膏
  • 消毒液(ポビドンヨード系など)
  • 止血パッド
  • 使い捨て手袋

ねんざ(捻挫)の応急処置

地震後の避難時や瓦礫の中を歩く際、足首などをひねることがあります。腫れや痛みが強い場合は無理に動かさず、RICE処置が基本です。

RICE処置内容 具体的な方法
Rest(安静) 患部を動かさず、できるだけ安静に保つ。
Ice(冷却) 氷嚢や冷却シートで20分ほど冷やす。直接肌に当てないよう注意。
Compression(圧迫) 包帯などで軽く圧迫する。ただし強く巻きすぎないよう注意。
Elevation(挙上) 患部を心臓より高い位置に保つことで腫れを抑える。

備えておきたい市販薬・救急用品

  • 冷却シート、アイスパック
  • 弾性包帯(バンテージ)
  • 鎮痛消炎外用薬(湿布など)

やけど(熱傷)の応急処置

地震による火災や調理中の事故でやけどするケースも少なくありません。初期対応が重要です。

やけどの程度 応急処置方法
軽度(赤み、水ぶくれなし) 流水で20分以上冷やす。その後、清潔なガーゼで覆う。
水ぶくれがある場合 水ぶくれは破らず、清潔なガーゼで保護。冷却も忘れずに。
重度(皮膚が白色・黒色、大範囲の場合) 直ちに119番通報し、衣服が張り付いている場合は無理に脱がせない。ショック防止のため安静に保つ。

備えておきたい市販薬・救急用品

  • 滅菌ガーゼ、大判包帯
  • 冷却ジェルシート・氷嚢
  • 市販のやけど用軟膏(アラントイン配合など) ※使用前に必ず説明書確認を推奨
ポイント:感染症予防と早期受診の重要性

災害時は衛生環境が悪化し、傷口から感染症になるリスクも高まります。応急処置後も痛みや腫れが続く場合、高熱が出た場合は速やかに医療機関を受診しましょう。また、市販薬・救急セットは家庭だけでなく、避難用リュックにも必ず入れておくことが大切です。

4. アレルギーや持病のある人が注意すべきポイント

日本特有のアレルギーへの備え

日本では、春先から初夏にかけてのスギ花粉症や、食物アレルギーを持つ方が多く見られます。災害時には医療機関へのアクセスが制限されることも多いため、事前の準備がとても大切です。

花粉症や食物アレルギーのための市販薬リスト

症状・疾患名 市販薬・対応策 備考
花粉症(スギ・ヒノキなど) 抗ヒスタミン薬(例:アレグラ、クラリチン)、点鼻薬、点眼薬 予備を十分に用意する
食物アレルギー エピペン(医師処方)、抗ヒスタミン薬、市販アレルギー対策薬 アナフィラキシー歴がある場合は必携
その他のアレルギー(ハウスダスト等) 抗ヒスタミン薬、マスク等の防護用品 避難所での環境にも注意

持病に応じた薬剤の準備と管理方法

高血圧や糖尿病、ぜんそくなど慢性疾患をお持ちの場合、普段服用している薬剤を最低1週間分は非常用持ち出し袋に入れておきましょう。分包タイプだと管理しやすいです。

薬剤管理手帳の活用について

「おくすり手帳」を常に携帯しておくことで、災害時でも医療機関で自分の服用中の薬やアレルギー歴を正確に伝えることができます。紙だけでなくスマートフォンアプリ版も利用可能です。

おくすり手帳記載内容例:
  • 現在服用中のお薬名・用量・服用回数
  • アレルギー歴(例:ペニシリンアレルギー)
  • 過去の副作用経験や治療歴など重要情報

医療機関との連絡方法と工夫

災害時には電話回線が混雑しやすいため、事前に地域ごとの災害時相談窓口や、最寄りの医療機関連絡先をメモしておくと安心です。また、LINEなどSNSを活用した自治体や医療機関からの情報発信も増えているので登録しておきましょう。

5. 災害時に役立つ情報と相談窓口

災害時の情報収集方法

災害が発生した際には、正確な情報を迅速に得ることが非常に重要です。日本では、行政や自治体、医療機関、薬局がさまざまな情報発信や相談対応を行っています。

主な情報源一覧

情報源 内容
市区町村の公式ウェブサイト 避難所情報・支援物資配布・医療体制など最新情報の掲載
防災アプリ(例:Yahoo!防災速報、NHKニュース防災) 地震速報・避難勧告・ライフライン情報などをプッシュ通知で受信可能
地域の薬局店頭掲示板 営業状況や応急処置に必要な市販薬の在庫状況など
テレビ・ラジオ(NHK等) 災害時の緊急放送で広範囲に重要情報を提供

相談窓口と連絡先

体調不良やケガ、市販薬についての相談は、以下の窓口を活用できます。

相談先 連絡方法/特徴
各自治体の保健所・健康福祉センター 電話や窓口で健康相談や応急処置、感染症対策などの案内あり
地域薬局(調剤薬局含む) 市販薬選びや服用法、持病との飲み合わせについて専門的なアドバイスが受けられる
#7119(救急安心センター事業) 24時間対応。緊急性の判断や適切な医療機関の案内を行う(都道府県によって設置状況は異なる)
#8000(小児救急電話相談) 夜間・休日に子どもの急病時に看護師や医師が相談対応(都道府県によって設置時間は異なる)
日本赤十字社 災害医療チーム(DMAT等) 大規模災害時には現地で臨時医療活動を実施。被災者向けの無料診察もあり。

災害時の医療支援体制について

日本では、大規模な自然災害発生時に「災害拠点病院」や「臨時診療所」「移動式薬局」などが設けられます。これらは被災地で必要な医療・薬剤サービスを迅速に提供するための仕組みです。また、自治体ごとに「地域防災計画」で医療救護班やボランティアスタッフが編成されており、負傷者や慢性疾患患者への対応をサポートします。

よくあるQ&A(例)

質問内容 対応窓口/ポイント
持病の薬が手元になくなった場合は? 最寄りの薬局または臨時診療所で相談。お薬手帳があれば持参する。
避難所で体調不良になった場合は? 避難所内設置の医療相談コーナーか、保健師さんに声をかける。
食物アレルギーがある場合、どうしたらよい? 配布される食事内容を必ず確認し、不明点はスタッフへ伝える。
外国人の場合、日本語以外でも相談できる? NPO法人や多言語対応可能な自治体窓口も増加中。事前確認がおすすめ。
まとめ:普段から備えよう!

災害発生時には、慌てず信頼できる情報源を利用し、必要なサポートが受けられるよう日頃から地域の相談窓口や支援体制について知っておきましょう。お薬手帳や健康保険証なども常に携帯しておくと安心です。

6. ご高齢者・小児のための特別な配慮と対応

日本の高齢化社会における災害時の課題

日本では高齢者の割合が年々増加しており、災害時には特にご高齢者への配慮が必要です。持病を抱えている方や、薬の管理が難しい方も多く、非常時には日常と異なる環境で体調を崩しやすくなります。また、小児も大人とは異なる対応が求められます。

ご高齢者のための市販薬選びと管理ポイント

ポイント 解説
服用中のお薬との相互作用 持病のお薬を服用している場合、市販薬との併用は医師や薬剤師に確認しましょう。
飲み込みやすさ 錠剤が飲みにくい場合は粉末や液体タイプも検討してください。
定期的なチェック 非常用袋内の薬は有効期限切れになりやすいため、半年〜1年ごとに確認しましょう。
避けたい市販薬成分 抗コリン作用(眠気・便秘など)のある風邪薬や鎮痛剤は注意が必要です。

おすすめの備蓄例(高齢者向け)

  • 解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど副作用が少ないもの)
  • 胃腸薬(整腸剤、下痢止め、便秘薬など症状に合わせて)
  • 外用消毒薬・絆創膏(傷が治りにくいことが多いため)
  • 持病薬(予備を主治医に相談して準備)
  • 口腔ケア用品(義歯洗浄剤、口腔保湿ジェルなど)

小児への応急対応と市販薬選びの注意点

  • 年齢による容量調整: 大人用の市販薬は使わず、必ず「小児用」と表示されたものを選びましょう。
  • 誤飲防止: 薬品類は手の届かない場所へ保管し、ラベルをよく確認して使用します。
  • 体温調節: 乳幼児は体温調節機能が未熟なため、適切な衣類や水分補給にも注意します。
  • 救急セット例:
項目 ポイント
解熱剤(小児用シロップ等) 発熱時に備えて。座薬タイプも便利です。
消毒液・絆創膏・ガーゼ 転倒・擦り傷対応に。
経口補水液(ORS)パウダータイプ 下痢・嘔吐による脱水対策として必須。
虫刺され・かゆみ止め軟膏 屋外避難時にも活躍します。
アレルギー対応薬(抗ヒスタミン薬) 医師指導下で事前準備できれば安心です。

応急処置で意識したいこと(子ども編)

  • 落ち着いて行動: 怪我や発熱時はまず安静にさせましょう。
  • 無理な自己判断はしない: 症状が重い場合や不明な場合は速やかに医療機関へ相談しましょう。
まとめ:家族構成に合わせた備えを心がけましょう

ご高齢者、小児それぞれに合った市販薬や応急セットを事前に準備し、定期的な見直しと管理が重要です。災害時にも慌てず対応できるよう、ご家庭で話し合っておきましょう。